■ お知らせ ■

診療時間変更

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禁煙外来をやっています!

★ タバコの害はわかっていて、禁煙をしたいがなかなか止められない・・、
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禁煙外来をはじめました。
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 ■ 病気の話 ■ 

胸痛の見分け方:狭心症の特徴とは? 

 胸痛を起こす重要な疾患として狭心症・心筋梗塞があります。両者とも心臓に血液を送る冠動脈の狭窄あるいは閉塞が原因となって起こるもので、短時間の血液供給不足で狭心症が起こり、長く続いて心筋細胞が壊れると心筋梗塞になるのです。いずれも初期治療が非常に重要ですが、狭心症は発作の時間が短く症状のないときに病院を受診しても診断が確定できないことも少なくありません。そこで狭心症症状の特徴を上げて、胸痛が起こったときに注目すべき事柄について述べます。

胸痛の性質は?

 狭心症では、胸の“痛み”というより“圧迫される”、“しめつけられる”、“重苦しい”などの症状として自覚され、“刺されるような鋭い痛み”、“チクチクする痛み”ではありません。また、症状は呼吸や咳で強くならない、身体の向きや体位変動に左右されないのも特徴で、そのような場合は呼吸器の病気や胸壁由来(肋骨や肋軟骨、肋間神経、肋間筋肉などによる痛み)が考えられます。

<胸痛の部位は?>

 典型的には前胸部(胸の真ん中)です。しかし、時には下顎(歯)、上腹部、首、肩、両腕、背部などへの放散することもあり、虫歯や胃の痛みなどと思ってしまうこともあります。狭心症らしくない症状としては、胸痛部分が指で示されるような狭い範囲である場合、押さえて痛い場合などで、やはり胸壁由来が考えられます。

胸痛の持続時間は?

症状は210分程度が多く、長くても2030分ぐらいで治まります。逆に秒単位の短いものは否定的です。30分以上続く場合、狭心症は否定的で他の原因が考えられますが、心筋梗塞の可能性はありますのですぐに病院を受診して心電図をとってもらったほうがよいでしょう。

どんな時に起こる?

 狭心症には労作性狭心症と安静時狭心症があります。労作性狭心症は冠動脈に強い狭窄がある場合に起こり、何らかの労作、例えば階段歩行、重い物をもつなど血圧や心拍数を上げる行為により出現しやすく、休むと治まるのが特徴です。安静時狭心症の多くは冠動脈のけいれん(スパスム)が原因で、早朝や夜間睡眠中に起こりやすいという特徴があります。また、狭心症は精神的興奮や食事(過食)でも起こり、朝方は発作が起こりやすい時間帯です。

胸痛の他にはどんな症状がでる?

比較的伴いやすい症状は、吐き気、嘔吐、冷汗です。また呼吸困難、意識障害を来すこともあります。これらの症状を伴うときは重症で心筋梗塞へ移行していることも考慮する必要があります。また、動悸、めまいを伴うときは不整脈が誘発されていることも考えられます。 狭心症発作の特効薬としてニトログリセリンの舌下錠あるいはスプレーがありますが、診断が確定できないときこれを診断に応用できる場合もあります。狭心症であれば舌下して15分で症状が改善しますが、効果がないときには狭心症が否定的であるか、逆に心筋梗塞を考える必要もあります。

狭心症・心筋梗塞は、必ずしも強い胸痛でなくても命にかかわる場合がありますので、以上のような症状が起こりましたら早めにかかりつけ医あるいは循環器専門医を受診してください。
   
                         
 2011.8.4 戸田源二



心房細動に関する話(原因と治療法)

Q1:心房細動って何?
 
 心臓の打ち方が乱れるのを“不整脈”と言いますが、心房細動は不整脈の一種で、脈は乱れっぱなしになります。心房は通常規則的に収縮して心室に血液を送る手助けをしていますが、心房細動では電気的には“かくいて”いるものの、いわゆる痙攣している状態で規則的に収縮していないのです。そのため心室も規則的に収縮しなくなり、脈が乱れます。一過性に起こるのを発作性心房細動、長く持続しているものを慢性心房細動と呼びます。

Q2:どうして起こるの?
 
 何らかの心臓病の人が心房細動になることが多いのですが、とくに基礎心疾患がないのに起こることもあります。起こしやすい危険因子としては、年齢、喫煙、高血圧、糖尿病などが上げられています。また、自律神経の乱れ、ストレス、飲酒などが影響していると言われています。甲状腺機能が亢進している場合にも起こりやすくなります。

Q3:こわい病気ですか?
 
 心房細動自体が命に関わる病気ではありません。しかし発作性心房細動が起こると、動悸、 胸苦しい、 息切れ、のどが詰まる感じ、などの自覚症状が出て不安感も強く、日常生活に支障を来たすことにもなります。

 最もこわいのは心房の表面に血栓ができ、それが血流に入り重要な血管を詰まらせる原因になることです。とくに脳血管に行くことが多く、心房細動は脳梗塞の重要な原因の一つなのです。

Q4:治療はどうするの?

病態に応じて、1)症状を抑える、2)正常の脈に戻す、3)血栓を予防する、治療が検討されます。
 発作性心房細動は、脈が速く打つことが多いため症状次第ではβ遮断薬などで脈を抑えます。正常の脈に戻すためには抗不整脈薬を使用しますが、電気的除細動(いわゆる電気ショック)や最近ではカテーテルアブレーション(カテーテルで直接心房筋を治療する)が行われることもあります。慢性心房細動になると正常心拍に戻すことは難しく、漫然と抗不整脈薬を服用しない方がいいかもしれません。
 血栓を予防するためには、おもにワーファリンという薬が使用されます。最近は、この治療を行うかどうかの指標として、CHADS2スコア(表参照)が参考にされています。
 いずれの治療法も、効果の見きわめと副作用に注意する必要がありますので、できれば専門医の治療が望まれます。

   表:CHADS2スコア:心房細動の脳梗塞リスク

危険因子

点数

C

Congestive heart failure (うっ血性心不全)

1

H

Hypertension (高血圧)

1

A

Age (年齢75歳以上)

1

D

Diabetes Mellitus (糖尿病)

1

S

Stroke/TIA (脳卒中/一過性脳虚血発作)

2

心房細動の人がこれらの危険因子を多く持っていると、
脳梗塞(脳塞栓症)の危険性が高い。
合計点数が1点の場合はワーファリンの服用を検討する。
2点以上の場合は、ワーファリンの服用が強く望まれる。                                              

                              2011.3.3  戸田源二


 ■ エッセイ ■
             

               
開業2年目・・

 「まだまだ暑いですね。お変わりありませんか?」
 こんな会話で始まる開業2年目の猛暑が、ゆったりと過ぎようとしています。
 1979年に始まった26年間の勤務医生活を終え、開業医として新しいスタートについてからあっという間に1年と9ヶ月が過ぎてしまいました。仕事にも慣れてようやく地に足がついた毎日が送れるようになったと感じられるようになり、少し医者としてのこれまでの歩みを振り返ってみました。
 折しも、大阪で世界陸上が開催され連日文字通りの熱戦が続いていますが、勤務医時代を競技に例えると、あたかも400mハードルのようでした。いくつかの障害に足をとられながらもどうにか乗り越え、決められたコースの上を周りの人に遅れないように、できるだけ速く必死に走っていたような気がします。前半は6つの関連病院に勤務し、非常に充実した研修をさせていただきました。後半13年間は大学病院でしたが、国立大学医学部の変貌を目の当たりに体験し、仕事の面ではさらにスピードアップが求められました。陸上競技のように成績をタイムで表すことはできませんが、どうにか決勝までは残れたかなという満足感はありました。
 一方、開業生活を陸上競技に例えると、クロスカントリーあるいはマラソンでしょうか?トラック競技でないことは確かなようです。スタート直後はたくさんのランナーに周りを囲まれ、前を走る人のする通りに手足を動かして必死に流れに乗ってきたような気がします。最近は少しずつ集団がばらけて、周囲のランナーおよび周辺の景色もよく見えるようになってきました。走っている道は初体験のコースで、山あり谷あり、ゴールがどこにあるのかもよくわかりません。しかし、順番を気にせず、四季折々の景色を楽しみながら自分でペースを調節して走っていこうと思います。四季折々の景色とは患者さんとのふれあいの中で体験できるものです。
 開院場所はそれまであまりなじみのなかった時津町で、あたかもパラシュートで舞い降りたようで五里霧中の船出でした。保険診療、病院経営など勤務医時代には人任せでできていた事も全て自分の責任で行わねばならず、同業者の助言や勧誘、様々な職種からの申し出など、色々迷うこともありました。しかし私にとって大きかったのは、先を歩んでいた先輩からの一言でした。開業してまもなく陣中見舞いに来て、「これまで通り、戸田君らしいやり方でやるのが一番いい」と言って頂きました。それでいいのだと思うと、肩の力が抜け足に力が入ったような気がしました。同門の先輩はあり難いものです。私も、後輩の道標になれるよう一歩一歩自分の道を歩いていきたいと思います。そして、いつの日かゴールが見えてきた頃に、“開業・・年目”の感慨として人生を満足感で振り返ることができたら・・と考えています。
                       
                               2007.8.31 戸田源二


          “笑い”と“運動”

 世はまさに「健康ブーム」です。
 テレビをつけると毎日のようにどこかのチャンネルで、ダイエットに効果的な健康食品や運動器具の紹介をやっていますし、家庭の医学風に様々な病気を特集して、やたら偏った病気の知識を視聴者に与えている風潮があります。昨今の殺伐とした世界情勢や近隣諸国による日本バッシングなどを考えると、本来は我が国の危機管理についてもっと議論しなければならない状況であるにもかかわらず、健康関連の番組で視聴率が稼げるということは、国民の興味が自己に向いているということに他なりません。
 こう考えると、“日本って平和なんだな”とつくづく感じてしまいます。
 さて、今の日本のように情報があふれている環境の中で生活していると、物事の本質が隠されてしまって、何がその人の健康維持に必要なのかわからなくなっている人も多いのではないでしょうか?
 厚生労働省は、平成12年から21世紀における国民健康づくり運動「健康日本21 http://www.kenkounippon21.gr.jp」を普及させ、健康寿命の延伸を目標に国民の健康作りを推進させようとしています。この健康寿命を延ばすということは、精神・身体両面で健康な状態を長く継続させるという意味に解釈してもよいかと思われます。そのような生活を想像してみますと、自ずからそこには“笑い”のある空間が浮かんできます。笑いには、声を立てて笑うlaughと微笑むsmileがありますが、健康な生活を送るためには両方の“笑い”をうまく活用して行けばよいのではないでしょうか? 
 今、お笑いブームで次々に若手芸人が出ていますが、健康を気にしている年代にも受け入れられる笑いを出せるセンスのある芸人はそう多くはいないようです。しかし、“笑うlaugh”という行為は、ヒトの免疫系にも好結果を及ぼして悪性疾患の抑制にも効果的であるという研究も発表されていますし、自分が心から笑えるような環境を作り出していけば、“微笑みsmile”のある健康な生活が送れることにつながると思います。
 健康寿命を妨げる要因を生み出すものに、いわゆる生活習慣病がありますが、それを予防するには食事療法と共に運動が有用であるということは、今や一般常識になりつつあります。しかし、この“運動”を実行に移して続けることは意外に難しいものです。身体的に支障のない人が運動療法を続けるポイントは、まず自分の興味と身体能力、そして生活環境に合った運動を見つけることだと思います。継続は容易ではありませんが、“もうひと頑張り”という気持ちを持ち続け、脳からβエンドルフィンが分泌されて、運動することに快感を覚えられればしめたものです。
 心肺機能の悪い人の運動はこれまで禁忌とされていました。しかし、過度の安静は逆効果であり、その人の心肺機能に合った適度の運動療法を行うことにより、主に自覚症状の改善、ひいてはQOL(生活の質)の向上につながることがわかりました。具体的な方法については専門医に相談すべきですが、肢体不自由者のパワーリハビリとともに、心不全の運動療法はリハビリテーション分野のトピックの一つになっています。心不全患者における運動療法のQOL改善効果は健常人にも勝ると言われており、これこそ精神的健康寿命を延ばすことにつながっていくのです。
 こうして考えて行きますと、心身共に健康な生活を送るためのキーワードの一つは“笑いと運動”であるとは思いませんか?
                               2005.12月 戸田源二